驚異的な成長を見せている最中のことだった。
2019年3月8日、JFA第24回全日本フットサル選手権大会の準々決勝バルドラール浦安戦に出場した名古屋オーシャンズのFP八木聖人は、この試合で右膝外側半月板損傷を負い、全治6カ月と診断された。
ボールを運べ、ゴールも奪える。さらに抜け目なく相手のスキを突くセットプレーのキッカーとしても、絶対王者のなかで存在感を高め、ブルーノ・ガルシア監督が率いる日本代表にも選ばれていた時の大怪我だった。
選手生命を脅かしかねないケガで、キャリアが暗転する選手は少なくない。だが、八木はしっかりとケガを完治させ、ピッチに戻り、負傷前のような輝きを放っている。実際にプレーオフ決勝第2戦では、名古屋の日本人選手で唯一のゴールを記録した。
「ヴァルチーニョがキックインから狙っていて、僕のディフェンスがちょっと油断している感じがしたんです。スペースが前にあって、『走ったら、はがせるし、チャンスになるんじゃないかな』と思って、信じて走りました。そうしたら良いパスが来たので。触ったら入ったという感じです」
FPラファの先制点から2分後に決まった追加点は、大分の選手たちにとって大きな精神的ダメージを与え、その後の圧勝劇の呼び水となった。
負傷前と変わらない成長曲線を描けている理由について、八木はこう明かしている。
「負傷する前から、自分のなかでも自信をもってプレーできていました。状態が上がってきたなかでのケガだったのですが、そのイメージを持ったまま、リハビリもしてきました。僕としてはケガをして途切れたのではなく、そのまま継続して、その間はリハビリになりましたが、その時のイメージのままトレーニングをし続けたので、つながっているイメージですね」
負傷している時と、負傷前では、できるトレーニングも限られる。それでも八木は、できる限りのメニューすべてを自身の成長につなげるつもりで取り組んだ。
Fリーグのタイトルは、名古屋にとって今季3つ目のタイトルだ。だが、オーシャンカップとAFCフットサルクラブ選手権を負傷で棒に振った八木にとっては、自身が関われた今季初のタイトルだ。
「今年、半分くらいいなかったのですが、今日は点を取れたし、チームに貢献できて、優勝できたので良かったです」
そう白い歯をこぼす八木は、日本代表のスペイン遠征メンバーにも選ばれている。
「まずは負傷しないこと。調子が良い時こそケガをしたりするので」
ピッチ上でしっかりと自身のプレーを表現できている八木は、2カ月ぶりのスペイン遠征で、ブルーノ監督に強烈な印象を与えるかもしれない。
発信元:FUTSAL X